ホールドから学ぶ、最も重要なルートセットの基礎知識

“守りつくして 破るとも 離るるとても 本を忘るな”

日本の文化を大きく変えた千利休の言葉です。教えに従って鍛錬を積み、型を身につけた者は、他流と自分とを照らし合わせて研究することにより、自分に合ったより良いと思われる型を模索し試すことで既存の型を「破る」ことができるようになります。基本の型を会得しないままにいきなり個性や独創性を求めるのはいわゆる「形無し」であるという意味もあります。

Wikipedia

型は一定の動作や所作であり、基礎のモジュールと言えます。’型’は’基礎’とも言い換えられます。基礎のないルートセットは自由なのではなく、闇に鉄砲、当てずっぽうの通り神です。

Shojinholdsの使命

世界中の全てのルートセッターに、ホールドの使い方の基礎・基本を知ってもらうこと。それが登る人の姿勢にどう影響していくのか=登る人の未来をどう変えてしまうのか、という理由を知ってもらうこと。それがShojinholdsの使命です。

ルートセットを深堀りする(3/3) で話したような”悪い姿勢”を誘発するムーブを避けるには、まずホールドの基本を知ることが最も手っ取り早く効率的なソリューションなのです。トレーニング云々、身体機能云々、色々すっ飛ばしていいので、ホールドから始めましょう。

ホールドから学ぶとは

崩されたクライミングフォームの代表格「肘が外に開いている姿勢」を想像してください。

修正できる点はいくつもありますが、大きな要因の一つがホールディングです。

人差し指から握り込むホールディングとなっていることが多く、人差し指に集中した力は手首を内旋させ、結果として、肘が開いていきます(図1)。

良い姿勢と崩れた姿勢

逆に小指から握り込むホールディング、小指-薬指-中指のように順々にしっかり力を入れていくと、肘は内側に周り、丹田からの力が上がってきます。胸が張り、顎が引かれてきます。姿勢を安定させる体幹部のパワーを有効に使うことができていて、体がしっかり伸びる準備ができあがっています。(図2)

ホールディングの力の入り方で、ここまで大きく姿勢は変わってきます。「力の入り方は、人それぞれだから」というわけではありません。

この要素と、ホールドの選び方は非常に強い結びつきがあることは自明の理。ホールドの選び方ひとつで、登る人のスキルの道、その人の未来が変わるのです。

* 理解が難しい場合は、今、手をグーにしてやってみてください。人差し指から腕全体に力を入れていくと、わずかに手首が内旋をはじめ、肩が上がっていき、それにつられて肘が開いていく感覚を拾ってみてください。小指側に力を入れると逆の動きになります。指と筋肉の連動は、武道やラケット競技が非常に参考になります。

基礎技術は制限によってのみ習得できる

ホールドには力のかかりやすい方向があり、握ったときに指がどういった形になるか、どこに力が入りやすいか、それぞれのホールドのそれぞれの特色があります。それの基本を理解し、身に付けなければ、登る人を成長させる良い課題のセットは絶対にできません。

ホールドの、どの部分がどういった働きをしているか、どういう動きを促すのかを、練習を通して頭と体で理解していく必要があります。それには、基本となる向きでホールドを付けるように制限しながらセットを練習するが、もっとも早く効率的な道になります。それが基礎練習です。

しかし、中にはセオリーと異なるようにシェイプされているホールドも少なからずあります。周りにどの向きでホールドを付ければよいか、すぐに明確な答えを出してくれる人がいるなら問題ありませんが、そうでないことがほとんどです。

Shojinholdsを使えば1人でホールディングの基本と奥深さを学ぶことができます。ShojinholdsのホールドにはGrip Guideがあり、ホールドの取り付け角度が指定されています。それによって、小指主体の基礎的なホールディングを感覚的に身につけられるようになっています。

Grip Guide 例 ( TH-LG2.2-4 )

たったこれだけでホールドの選び方が激変するでしょう。Shojinholdsが教材だという所以です。ホールディングの基礎が身につけば、狙ったとおりのホールドを選べるようになります。フットワークのコントロールも、姿勢の誘導も、身長差による距離感の調整も、自由自在です。全ては最適なホールドを選べるかどうかにかかっていて、その基礎技術と知識は、コンペやイベント、ビギナーからエキスパートまで、どんな課題にも応用が効きます。

あなたの自由で想像的なルートセットによって、たくさんのクライマーが怪我なく優雅にそれでいて日々の練習に達成感を覚え、どんどんと上達していくことでしょう。